NEWS ニュース

2025.07.08
info
菅沼芙実彦監督のオフィシャルロングインタビューを公開!
本作の監督を務める菅沼芙実彦のオフィシャルロングインタビューが公開!
打診を受けた当時の率直な気持ちや、原作漫画から感じた事、スタッフとのやりとりなどお話いただきました。
今回が TV アニメシリーズ初監督となる菅沼監督。嬉しさと不安が混ざる感情の中、本作のアニメ制作で監督が大切
にしている信念や思いは――?

■菅沼芙実彦(監督)プロフィール
アニメ監督、演出家、アニメーター。
P.A.WORKS にて『SHIROBAKO』、『有頂天家族』など多くの作品に携わる。
その後独立し、映画『THE FIRST SLAM DUNK』、『T・P ぼん』など話題作の演出を担当。
本作(TV アニメ『ガチアクタ』)にて初の監督デビューを果たす。
==============
インタビュー(全文)

──まず『ガチアクタ』の監督として、打診を受けたときのキッカケや、お気持ちをお聞かせください。

菅沼:率直に言って嬉しかったです。ただ、今までボンズフィルムさんとお仕事をしたのが、(『T・P ぼん』(タイムパトロールぼん)の時)一度だけだったので「大丈夫かな?」と思いました。嬉しいの直後に、不安も来たというのが素直な感覚です。でもいつかはと思っていたので、このタイミングで(安藤さんから)もお声がけいただいて光栄です。

──原作漫画を読んだ印象はいかがでしたか?

菅沼:最初に見たのは、まだ一巻が出た時くらいです。まずは、表紙の「画」でがっちり掴まれて、これは「何かあるな」と思いました。同時に、この作品は「画」を大事にしていかないといけないなというプレッシャーも受けました。ストーリーに関して言うと、先が読めないということが、楽しみであり、身構えるところもありました。

──TV アニメ化にあたって、原作の裏那圭先生、graffiti design の晏童秀吉さんと、どのような会話をされましたか?第一印象も教えてください。

菅沼:裏那先生の第一印象は「ピンク色」です。当時、たしか革ジャンに革靴でパンクファッションというスタイルに加えて、髪色がピンクだったんです。お隣におられた晏童秀吉さんも身長が高くて、力強さを感じました。良い意味で尖りを感じて、この漫画(ガチアクタ)描きそうだなぁって思いました。

先生たちとは、最初に設定関係のお話をして、今後のストーリーなどのバックグラウンドも伺っていきました。その時、裏那先生に「ご自身を一番投影しているキャラクターは誰ですか?」って聞いたことがあって、先生が「ザンカです」と言われたのは、意外に感じました。尖った見た目の裏側に、泥臭いことを積み重ねてこられた努力があるんじゃないかなと。これは僕の想像ですけど、特に「画」に関して相当ストイックにやってこられたんじゃないかと思っています。

──『ガチアクタ』は晏童秀吉さんのグラフィティアートを取り入れた、これまでにない異色の漫画だと思いますが、アニメ映像化に当たって意識しておられたことは何かありますか?

菅沼:誰が代筆しても基のグラフィティの良さを十分に表現することはできないと思ったので、基本的にいただいたものを、ほとんどそのまま活用させて欲しいと私から直接伝えましたね。

──シリーズ構成・瀬古浩司さん、キャラクターデザイン/総作画監督・石野聡さんとは、どのような会話をされたのか、それぞれ教えてください。

菅沼:瀬古さんは、自分が初監督だったこともあって、おんぶにだっこ状態でした。有名な作品を含めて何本も経験しておられるのと、年齢が近いこともあって、私からオファーをしたいとボンズフィルムさんにお伝えして、実現しました。オファー時に、既に他作品を何本か抱えておられたようで、難しいかなと思いつつ、なんとか引き受けてもらえて、「初めての監督作品に携われて嬉しいです」とお言葉までいただきました。

石野さんとは、原作の良さを残しながら、どのようにして「セル質感」を入れていくか、模索しました。ルドの髪の毛先など、原作の躍動感は表現しつつも、あえて撮影処理を入れすぎずに、昔ながらのアニメ表現であるプレーンな質感を加えていけるように工夫しました。

あと、漫画タッチを入れるに当たって、線の質感も意識しました。鉛筆やペンの書き味が、アニメがデジタルに移行した時、まるっと消えてしまっていたんですよね。ただ、近年は技術の向上で改善されつつあって、手書き感を出せるようになってきたので、そこを意識して、今の形に落ち着きました。

──かなりパンチのある音楽(劇伴)だなと思ったのですが、音楽・岩﨑琢さんに、監督から何かご要望は出されましたか?

菅沼:具体的な指示をしたというよりは、作品の世界観を丁寧に説明しました。「ゴミ」「鉄くず」などの世界観を、デジタル上で作った音や、金属音を取り込んで作ってくださって、更に印象的になったなと思います。

──プロデューサーチームにご要望は出されましたか?印象的な出来事もあれば教えてください。

菅沼:一番印象に残っているのは、TVアニメで放送するに当たっての「表現における制限」です。原作で主人公・ルドが中指を立てるシーンがあるんですが、そこがどうにかならないかと奮闘しました。例えば、指が全部画面に映っていなければよいのか、どこまで隠せば実現できるのかといった具合に、互いに調整を重ねました。残念ながら、実現しなかったのですが、印象的な出来事です。

(天野:最初にご一緒したのが、演出として参加いただいた『T・P ぼん』(タイムパトロールぼん)時なのですが、本作とジャンルが違うので、特にアクションに対して、監督がどう演出するのか気になっていました。2話のコンテをあげていただいた時に、かなり尺オーバーだったのですが、同時に作品の世界観をしっかりと表現してくださることを実感しました。特に本作はルックとアクションが見どころなので、そこに対する信頼が強まったという意味で印象的な出来事でした。)

──描いていて、特に楽しいキャラクターはいますか?

菅沼:みんな好きなのですが、特に印象的なのは「ジャバ―」「オーガスト」「ババア」あたりですかね。はっちゃける方向で脱線する時に、かなり自由度高くやらせていただいている気がします。

──アフレコ時の声優陣の演技はいかがでしたか? 個人的に好きなシーンがあれば教えてください。

菅沼:「オーガスト」「ババア」の掛け合いですかね。
まだこれからですが、「ブンドゥス」「ブロ」のシーンも楽しみです。基本的には、わいわい騒いで掛け合いしているシーンが好きなんです。割と今までの作品はそうだったし、もっと入れていきたいとも思っています。

──記憶に残っているシーンはありますか?

菅沼:2話の斑獣とのバトルシーンですかね。自分でチェックしながら、スタッフにも何度か声をかけました。奈落に落ちるシーンも印象的ですよね。あのシーンは、アニメーターの冨吉幸希さんが、かなり前のめりに提案くださった表現を使っています。

──作品にちなんで、監督が大切にされている“もの”があれば、教えてください。

菅沼:漫画はずっと持っていますね。一番最初に買ったのは、沢田ユキオ先生の『スーパーマリオくん』です。数はあまり持っていないんですが、捨てずに持っているものが多いです。最近だと『HUNTER×HUNTER』や『メイドインアビス』も読んでいます。

アニメでは、『ルパン三世 風魔一族の陰謀』の車シーンをもう一度見返したいとずっと思っているのですが、時間がとれなくて、まだ見れていないです(笑)

──監督が本作品で最も描きたいこと、伝えたいことを教えてください。

菅沼:どの作品にも言えるのですが、原作を預かっている以上、純度高くそれを映像に落とし込むことが、僕のやるべき一番の仕事だと思っています。その上で、作者の伝えたいことを代弁して魅せていきたいです。

──最後に、本作を見てくださる方々にメッセージをお願いします。

菅沼:作品の勢いと共に、見てくださる方々もノッてもらって、一緒に駆け抜けましょう。少しでも生きていく上での力になったり、ポジティブに「一発くらわしてやるぞ」という気持ちになってもらえたら良いなと思います。